意外な落とし穴

昨日行なわれたエリザベス女王杯で無敗の3歳女王・カワカミプリンセスに、ついに土がついた。

第31回エリザベス女王杯(12日、京都11R、GI、3歳上牝馬オープン国際マル指、定量、芝2200メートル、1着本賞金9000万円=出走15頭)無敗V6の歓喜から一転、京都競馬場がため息に包まれた。12日に行われたエリザベス女王杯は、オークス秋華賞とGI連勝中で1番人気のカワカミプリンセスが1位入線したが、走行妨害で12着に降着牝馬GI完全制覇の記録もかかっていた本田優騎手(47)がガックリ肩を落とす悪夢の結末。なお繰り上がってフサイチパンドラが優勝した。
無キズV6の夢を乗せて走ったカワカミプリンセスは、豪快なフィニッシュを決めて、ファンの喝采を浴びた。引き揚げてきた本田優騎手はガッツポーズ、関係者と握手をかわす。その約15分後に訪れた悪夢…。長い審議の末、裁決委員から“降着”の裁定を告げられてパトロール室から出てきた本田は、強ばった表情で勝負服を脱ぎ捨てた…。言葉にはならない悔しさがにじみ出ていた。
“第1位に入線した(16)番カワカミプリンセス号は最後の直線で急に内側に斜行し、(2)番ヤマニンシュクル号の走行を妨害したために第12着に降着…”。
その瞬間、カワカミプリンセス(右)が内にグイッと切れ込んだ直後のヤマニンシュクル(中央)の四位騎手は完全に立ち上がっていた。
審議放送が流れ、6万5000人の歓声が悲鳴とどよめきに変わる。西浦勝一調教師は両手で×印を作り、深川亨史調教助手の表情も見る見るうちに曇り出す。結果は1位入線から、11着のヤマニンシュクルの後の12着へ降着。思いもよらぬ形で無敗連勝はストップした。
「馬場に脚を取られて反応が悪く、少し苦しがって、走りもフラフラしていた。前の馬がヨレそうだったので、早めに(避けよう)と思って内へ行った」と、本田は悔しさをかみ殺しながら話し始めた。
4コーナーをカーブして、直線に向いてすぐのところで発生した不測の事態。中央より外めにいたカワカミに、本田が左ステッキでGOサインを出した瞬間に、内に切れ込んで、ヤマニンシュクルの前を横切ってしまった。悔やんでも悔やみきれないあの一瞬。走破タイム2分11秒4、2位入線のフサイチパンドラに1馬身半差をつける強さを見せても、“勝負”には勝てなかった。「裁決がそう(降着と)判断したんだから。レースには勝ってるけどな…」と平地騎手最年長47歳の主戦は言い残すのが精一杯だった。
西浦師も苦しい胸のうちは同じだ。「ルールはルールだから決まったものには従うしかない。ただ1着に入ったのに、表彰式をやってやれないのはかわいそう」と、愛馬を思いやった。
有馬記念(12月24日、中山、GI、芝2500メートル)でディープインパクトと対決とする夢も、夢のまま終わるのか…。しかし紛れもなくカワカミプリンセスは強かった。オークス秋華賞に続きフサイチパンドラら同世代を封じ込め、古馬女王で昨年の覇者スイープトウショウを一蹴したパワーとスピードは、牝馬の域を超えている。ひとついえることは、まだ1度も、ゴールの瞬間には後塵を拝してはいないということ。カワカミこそ、真の女王。リベンジの時はすでに始まっている。

まさかの1着降着。パトロールビデオを見る限り、採決委員の判定は正しかったと言わざるを得ないし、こういうコトも競馬の内だから、カワカミプリンセス陣営に特に同情する事は無い。
しかしながら本田騎手も勝負の一瞬で魔が差したというか、勝ちにいかなければならない立場だったからこそのアクシデントだったと思う。そういう馬じゃなかったら、あそこで無理に内に入れることはしなかっただろうしね。
それにしてもカワカミプリンセスは強かった。秋華賞後に書いたこの記事で、
見てすぐに気付くのが勝ち時計。2分11秒台で決着するような早いペースだと逃げ先行馬に出番は無いが、道中ペースが落ち着くようだと逃げ先行策をとった馬が複勝圏内に残りやすい。当たり前のことだが、次のハロンタイム比較を見ると第26回と第28回は4〜5F目(800〜1,000m)で息の入らないような展開であったことが判る。
ハロンタイム】(逃げ馬と通過ペース)
第26回 ヤマカツスズラン 1-1-1-1 (優勝 トゥザヴィクトリー 2:11.2良)
12.3 - 10.9 - 12.0 - 11.7 - 11.6 - 12.0 - 12.3 - 12.1 - 12.3 - 12.0 - 12.0(上り3F 36.3) 
第28回 スマイルトゥモロー 1-1-1-3 (優勝 アドマイヤグルーヴ 2:11.8良)
12.3 - 10.8 - 11.3 - 11.3 - 11.8 - 12.2 - 12.7 - 12.1 - 12.1 - 12.4 - 12.8(上り3F 37.3)

第30回 オースミハルカ   1-1-1-1 (優勝 スイープトウショウ 2:12.5良) 12.3 - 10.9 - 11.9 - 12.4 - 12.5 - 12.5 - 13.3 - 12.0 - 11.5 - 11.1 - 12.1(上り3F 34.7)
と、エリザベス女王杯は時計勝負になるかどうかを読みきることが全てと指摘した。
で、今回がどうだったかというと
ハロンタイム】
第31回 シェルズレイ   1-1-1-1 (優勝 フサイチパンドラ 2:11.6良)
12.5 - 10.6 - 11.7 - 11.3 - 11.3 - 12.2 - 12.5 - 12.8 - 13.0 - 11.5 - 12.0(上り3F 36.5)
とかなりキツイ展開だったことが判る。実際本田騎手も『馬場に脚を取られて反応が悪く、少し苦しがって、走りもフラフラしていた』」とレース後に言っていたとおり、カワカミプリンセスもイッパイイッパイだったのだ。 しかし、そういうキツイレースにも拘わらず、最後は一瞬のうちに突き抜けて2:11.4、トゥザビクトリーに次ぐ早い時計でフサイチパンドラに1馬身半差をつけてみせた。レースには負けたが、能力差は歴然だ。
記録としては途切れたものの、実質未だ無敗であることには変わりない。果たして有馬記念に挑戦するのかどうか、動向が注目される。