ディープインパクト薬物使用疑惑の謎

昨日のニュースで凱旋門賞に出走したディープインパクトに禁止薬物使用があったと発表された。

10月19日にフランスギャロから発表されました広報発表文は以下のとおりです。
2006年10月1日(日)にロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞競走において、ディープインパクト号は3着となり、理化学検査(検体採取)の対象となった。
A検体の分析は競走馬理化学研究所(仏)で実施されその結果、イプラトロピウムが検出された。この薬物は呼吸器系に作用する気管支拡張剤であり、フランスギャロ競馬施行規程の禁止薬物にあたる。
B検体はフランス調教師会の指定により、香港ジョッキークラブ理化学研究所に送付され、A検体と同様の薬物の検出が確認された。
この状況に関し、フランスギャロ審査委員会は競馬施行規程第201条に従い、仏国および日本において調査を行った。  フランスギャロの獣医師によりディープインパクト号の関係者に対する聞き取り調査が実施された結果、同馬のフランス滞在中に、上記薬物を用いた治療が行われていたことが判明した。
この調査に続き、フランスギャロ審査委員会はディープインパクト号の馬主および調教師を召喚し、調教師責任の精査および競走馬の失格について規定している競馬施行規程に従って処分を決定する。
以上がフランスギャロ広報発表(日本語訳)
【参考】禁止薬物の検査システム
禁止薬物の理化学検査の対象馬からレース後採取された検体(尿もしくは血液)は、二つに分割されて検査機関に送られ検査されます。分割された最初の検体(A検体)から禁止薬物が検出された場合に、保存されていたもう一方の検体(B検体)にA検体と同じ禁止薬物が存在するかどうかを確認する制度です。この制度は、日本、フランス等、世界の競馬開催国において広く採用されています。

イプラトロピウムとは本来気管支炎や喘息の治療に使われるもので、日本では禁止薬物として指定されていないもの*1。よって日本での出走に支障が無いとのことで、とりあえず一安心。
しかしこの薬物疑惑には、あまりにも不可解な点が多い。
まず、そもそもディープインパクト陣営に禁止薬物を使用しなければならなかった動機が見当たらない。
不正というのはそれを行なうことによって関係者が何らかの利益を得ることが出来るからこそ行なわれるのであって、仮にディープインパクト陣営に「凱旋門賞を日本馬で初めて勝つ」という理由を当てはめてみても、ドーピングというリスクを犯してまで勝ちたいレースか?というと、どうもしっくりこないよね。
ディープインパクトは既に国内で確固たる「実績」を積んでいる。ちなみにここでいう「実績」とは、3冠馬であることや生涯獲得賞金や勝ったGⅠの数のことではなくて、今までレースで見せてきたあの破壊的なパフォーマンス、武豊をして「この馬に勝てる馬がいるのか?」とまで言わしめた別次元の能力のこと。
確かに「凱旋門賞を初めて勝った日本馬」とあればそれはそれで大変な名誉だが、しかしディープインパクトは既に凱旋門賞に勝つこと以上の価値を見出されていたのだから、今さら凱旋門賞を勝とうが負けようが、ディープインパクトの今後にとってさしたる大きな影響を与えるものではなかった。仮に勝っていたとしてもせいぜい珍しい勲章が1つ増えたにすぎない。実際、凱旋門賞の結果にかかわらず51億円という日本産馬最高額のシンジケートが組まれているのがその証拠といってよいだろう(まぁ外国の馬産関係者には「凱旋門賞という看板」は多少のアピール材料になるだろうけど)。
それに日本人はフランス人が思っている以上に凱旋門賞というレースに価値を見出してはいない。
日本の競馬関係者に「ダービーと凱旋門賞。どちらのタイトルが欲しいか?」と聞いたら、おそらく9割以上が「ダービー」と答えるだろう。凱旋門賞はダービーのように生涯1度しか挑戦できない特別なレースではない。例え負けても馬さえ無事ならば現役でいる限り何度でも走らせられる。そういう条件のレースに、わざわざ不正を仕掛けなきゃならない理由はどこにもない。
さらに言えば
「フランスギャロの獣医師によりディープインパクト号の関係者に対する聞き取り調査が実施された結果、同馬のフランス滞在中に、上記薬物を用いた治療が行われていたことが判明した。」
とあるのも解せない。金子真人オーナーはさておき、現場の最高責任者である池江泰郎調教師や日本の関係者が海外とはいえ出走レースの禁止薬物についてなんの予備知識も無かったというのは常識的に考えにくい。池江調教師がフランスを離れている間も報告は逐一入っていただろうし、少しでも馬体に不安があったなら出走回避すればいいだけ。無理して出走させて取り返しのつかないことにでもなったら元も子もないのだから。競馬を知らないエセディープファンはブーブー言うだろうが、競馬の世界じゃ出走取消なんて日常茶飯事。対した問題じゃない。
ディープインパクト号の関係者に対する聞き取り調査」とは現場に入っていた日本人関係者も含まれてのことなのだろうか?いや。調教師や調教助手、厩務員を含め既に全員帰国しているのだからそれはちょっとありえない。おそらくフランスで間借りしていた厩舎関係者の話だろう。だとすればこの「聞き取り調査」というのも完全なものではなく「聞ける人だけに聞いた」単なる経過だな。
とここで、また新しい情報が入ってきた。

凱旋門賞(10月1日)で禁止薬物が検出されたディープインパクト(牡4、栗東池江泰郎)について、フランスの競馬統括機関、フランスギャロのロマネ専務理事は20日、「薬物はフランスの獣医師が処方した。獣医師は(投薬を中止するべきタイミングとして凱旋門賞の)最低5日から1週間前と指示したが、守られなかったことは明らかだ」と説明。処方上の注意を守らずに日本側の調教師らがレース直前まで投薬を続けたことが原因との見方を示した。
検出された薬物は気管支拡張効果のあるイプラトロピウムで、レース時に体内に残留していなければ問題ないとされる。
同専務理事はフランス側が下す処分について、凱旋門賞の失格と3着の賞金、22万8600ユーロ(約3400万円)の支払い停止、調教師への罰金(最高1万5000ユーロ)となる可能性が高いとの見方を明らかにした。
また、薬物を処方したのはフランス滞在中にディープインパクト陣営が利用した厩舎のラングロワ獣医師と説明。しかし同獣医師は「自分は関係していない」と反論するなど、フランス側関係者の説明には食い違う部分もある。
同専務理事は「極めて残念だ。ディープインパクトが偉大な馬である事実に変わりはない。日本人ファンの失望も理解できる。しかし規則は規則だ」と述べた。

ますます胡散臭くなってきましたねー(苦笑)
槍玉に上がったフランス人獣医師がさっそく「自分は関係無いよ」とコメント。
オイオイ!じゃぁ誰が投薬治療したんだよ?フランス滞在中は現地の獣医師しか見れないんだろーが?なのに「処方上の注意を守らずに日本側の調教師らがレース直前まで投薬を続けたことが原因
って、
ゴルァーーーーーーッ!(ノ#゚Д゚)ノ☆ミ◇
いくらなんでもそんな凡ミスするかってんだ!相手はこれまで数多くの実績を積み上げてきた日本の名調教師だぞ!
競馬後進国だからって舐めやがって、クソったれがッ!!!日本サイドは関係者もファンも誰一人として納得しねぇぞ!
こうなってくると調べたという検体が本当にディープインパクトのものだったのかも怪しい。内部関係者に犯人がいると仮定するなら検体そのものを入れ替えることだって決して不可能じゃないし、検体が間違いなくディープインパクトのものであったとしても、考えうる状況から日本人関係者以外に一服盛られたのはもはや疑い様が無い。
ディープインパクトは嵌められたのだ!
では、真犯人は誰なのだろう?ディープインパクトが失格になることで得をするのは一体?

*1:正確には「日本では馬に対してイプラトロピウムが使われた実例がない」ということらしい。