皐月賞展望

15:40- 皐月賞(GⅠ)@中山競馬場

どうやらレース当日の天気がかなり怪しいという予報が…もし雨が降るにしても、レースまでにどのぐらい降るのかわからない。
場合によっては予想の書き換えも考えておかなきゃならないので、最終結論はギリギリまで悩みそう。
先週の桜花賞と同じように有力と目される馬は片手では足りない。
巷では「ハイペース必至で差し馬優位」といわれているが、果たしてどうだろうか?


こうした時「困ったときは武豊」となる傾向があるけれど、連では信頼度が高くても単で来る可能性はそれほど高くはない(現に桜花賞も負けたし…)。
今年の相棒は、1番人気確実のアドマイヤムーン弥生賞でクセのある中山コースを経験&しっかり勝ってみせたのは評価できる。
が、ココ15年ぐらいを見ても弥生賞の勝ち馬がそのまま皐月賞を制した例は、2001年アグネスタキオンと昨年のディープインパクトの2頭だけしかいない。
さらに両馬に共通するのは、「皐月賞まで無敗」というパーフェクトな戦績であることはもちろん、「3冠もありえる」というぐらい「他馬に付け入る隙を与えない、圧倒的な力の差を見せ付けて勝ってきた」ということ。
つまり、「ポテンシャルが一段抜けた馬でない限り、中山コースで連勝するのは至難の業」なのだ。
メジロライアンウイニングチケットスペシャルウィークナリタトップロード…後のダービー馬やGⅠ馬でさえ皐月賞では人気になりながら一敗地にまみれている*1。中山2000mで同じような競馬をするのがどれほど難しいかをよく現したデータである。
果たして今年のアドマイヤムーンにこのデータを覆すだけの力があるのか…といえば、自分にはそうは思えない。現に休み明けだったとはいえラジオたんぱ杯2歳Sサクラメガワンダーに負けているし「強さは認めても絶対的な存在ではない」というのが今のところ出ている唯一の結論。
もちろん当日の状態さえ良ければ9割がた連には絡むはず(差し馬ゆえ思わぬ不利を受けて連を外すことはありえる)。


では、逆にどういった馬が皐月賞では台頭しているだろう?
ミホノブルボン(1992)、ジェニュイン(1995)、サニーブライアン(1997)、セイウンスカイ(1998)、ダイワメジャー(2004)
そう、逃げ馬もしくは内枠に入った先行馬が圧倒的に有利。今回それに該当するのは、

1枠 1番 []フサイチリシャール[]
3枠 5番 []メイショウサムソン[]

スプリングS組2頭。
競馬週刊誌に載っていた有力馬の馬体を見ていくと、体形的に中山の急坂に合うだろうと思われるのがフサイチリシャール。肩のラインを基準にして尻のラインが上にあるタイプは、上り坂のある中山に有利な体形*2クロフネのパワーとスタミナに、SS牝馬フサイチエアデールの切れ味を加えた、今後の規範になる産駒といえる。
スプリングSでは押えてしまったばかりに、結果として常に先行していた勝ち馬・メイショウサムソンを捉えきれなかった。鞍上の福永騎手もキングヘイローの時に同じようなレースをしてセイウンスカイに負けたことを思い出したのではないか。最内を引いた今回は、スタートさえ失敗しなければ本来の強気な先行策で勝負するだろう。重馬場も苦にしないオールラウンダー。現時点では出走馬中、最も安定した力を持っている。
鞍上も3週連続重賞勝利中で冴えている時期でもあるし、馬券対象からは外せない。


メイショウサムソンはオペラハウス産駒らしいガッチリとした作りでコースに左右されないタイプ。東京スポーツ杯2歳S(GⅢ)では萩S(OP)に続いてフサイチリシャールに負けたが、上がりでは0.2上回っていたように先行力を備えたパワフルな末脚が武器。スプリングSの結果は決してフロックではなかった。
ダンシングブレーブの肌にオペラハウス────ヨーロッパ屈指の一流馬同士の配合で単純なスピード勝負では見劣るがタフなレースになればなるほど力を発揮する。実戦を繰り返して徐々に結果を出してきただけに、芯の太さは特筆モノ。


両馬とも2000mはベストディスタンス。ボロ負けすることは考えにくいが、唯一気になるのはデビュー後休養らしい休養を取っていない点か。当日の気配に注意したい。


その他の有力馬で筆頭株といえるのは、4戦無敗を誇る話題の3億円馬・3枠6番に入ったフサイチジャンク
デビュー前は人気先行と思われていたが、キッチリと結果を残して「高馬は走らない」という言葉が当てはまらないことを実証してきた。
関西馬ながらデビュー戦で中山競馬場を走らせたり、徹底して2000mのみを使ってきたのは「全てはこの時の為」と言わんばかり。
これまで重賞未出走ゆえに強豪との対戦をしていなかったり、勝ってもチョットだけの差だったりする点(最大で若駒Sの2着に0.3秒差)を不安視する向きもあるが、中山⇒京都⇒阪神とコースと異なるコースを走って4連勝というのは、相応な実力がなければ出来ないこと。上がり33秒台を駆使する末脚はアドマイヤムーンと遜色なく、能力的には全く疑う必要はないと思う。
むしろ不安な点があるとすれば、ここまでスローの上がり競馬しか経験していないことフサイチリシャールにしてもメイショウサムソンにしても、後続を封じるため平均的に速い脚を使う戦法をとると思われ、道中なし崩し的に脚を使わせるパターンが一番怖い。勝負どころで急にペースが上がった時についていけるかどうか? 1/8の1回京都・福寿草特別で手綱を取った武豊騎手がレース後に「勝負所でペースが上がった時に付いて行けなかった」とコメントしているのが気になる。第1人者の武豊がクラシック本番のお手馬としてデビューから競馬を教えていたこの馬ではなく、途中で引き受けた形のアドマイヤムーンを選択した事実*3は、予想をする上で信用に足る重要なファクターであるのは言うまでもない。後を受けた岩田康誠騎手はテン乗りデルタブルース菊花賞を取ったことがあるように大舞台でのテン乗りには慣れていると思うが、それでも関西所属で普段乗ることの少ないクセのある中山コースでいきなり力を出せるかどうかは疑問。


今回のレースを計る上で実力的に物差しになりそうなのが6枠12番のサクラメガワンダー
アドマイヤムーンとの直接対決は1勝1敗。にもかかわらず人気に差があるのは、弥生賞の結果と鞍上が「武豊」かどうかだけ。ところがココに来てこの馬もまた鞍上の安藤勝巳騎手に去られるという事態に。安藤勝巳騎手がどのような基準で選んだのかは解りませんが、おそらくダービーを意識しての選択ではなかったかと…その原因も弥生賞の時に「輸送で入れ込んでしまった」という精神面での弱さを感じたからではないでしょうか。
クラシックを戦う上で「何事にも動じない精神的な強さ」は必要不可欠。いくら能力があってもそれを常時発揮できないのでは、宝の持ち腐れでしかない。安藤勝巳騎手は、実力的には充分認められてはいるものの、それは目に見える形で結果を残しているからこそ。地方出身である彼はサークル内部に縁故関係があるわけでもない。実績のみが評価されるシビアな世界であることを良く知っている。一方その手綱を引き受けたのもまた地方の雄・「職人」内田博幸騎手。オーシャンS(GⅢ)では既にピークは過ぎたと思われていた8歳馬ネイティブハートを勝利に導いたように、追えるという意味ではこれほど適任者はいない。千載一遇のチャンスを得て一発を狙ってくるだろう。


そして安藤勝巳騎手が今年の牡馬クラシック戦線のパートナーに指名したのは、2枠4番キャプテンベガ
先のフサイチジャンクとともにSS最後の世代として名牝ベガが送り出した期待の新星。前哨戦・若葉Sはスローペース。フサイチジャンクに対して先行し、直線では差し切られた。結果をみれば現時点の完成度で相手が1枚上だったと考えていい。


ダークホースは1枠2番ドリームパスポート
きさらぎ賞メイショウサムソンスプリングS)、マイネルスケルツィ(NZT3歳S)、アドマイヤメイン毎日杯)と後の重賞勝ち馬をまとめて破った実績は無視できない。その源にあるのは、母父トニービンから受け継いだと思われる切れ味鋭い末脚。嵌まった時の破壊力はすさまじいものがあるが、その反面、出遅れ癖があり不発で終わる可能性も。レースが予想以上に早くなるようだと急浮上してくる1頭だろう。


ファンタスティックライト産駒が2頭。
藤沢和雄厩舎が送り込むジャリスコライト朝日杯フューチュリティーS(GⅠ)では1番人気に押されたように中山1600で1.34.0は優秀。このときはフサイチリシャールの3着に敗れたが、次走の京成杯皐月賞と同じ舞台)をキッチリと勝ち上がってコース経験+皐月賞出走を確定させた。今回はそれ以来の休み明けになるが、出てくる以上いきなりでも走ってくる厩舎なので、気配には要注意。
ナイアガラは池江泰郎厩舎+金子真人ホールディングスという、いわゆる「ディープインパクト」ライン。前走で不良馬場の阪神・すみれS(OP)を上がり34.9を使って差し切り勝ちし、3連勝。初の遠征競馬+中山コース、強い馬との対戦経験がないなど不安を上げたら切りがないが、勢いを掴んだものが制す皐月賞だけに、人気薄だからといって軽視は禁物。
ファンタスティックライト産駒は出走頭数も少ないので正直今だ傾向が掴めていないけど、時計勝負よりは上がりのかかるタフなレースで良さそう。雨が降って馬場が悪化するようならば気をつけたい。


もう一頭気になる馬は、ステキシンスケクン。前走アーリントンC(GⅢ)は平均ペースの逃げ。最後の直線で後続を突き放し、2着ロジックを0.6差に退けた。そのロジックは今回出走の有力馬との顔合わせが多く、新馬勝ち〜近走のNZT3歳S(GⅡ)までの全7戦で3着以下がないという波の無い堅実馬。その馬に最大の着差を付けたのだから力は侮れない。距離経験こそマイル戦までしかないが、他が牽制し合う様ならチャンスも。

*1:ダンスインザダーク弥生賞で強い勝ち方をして皐月賞1番人気確実と言われていたが、直前の熱発により皐月賞を回避している

*2:逆に尻が下にあるタイプは東京で有利に働く体形。アドマイヤムーンはどちらかと言えばコッチ。

*3:アドマイヤムーンのデビュー〜ラジオたんぱ杯2歳Sまでは本田勝騎手騎乗。