第25回ジャパンカップ(GⅠ)回顧

ryan-giggs2005-11-28

ジャパンC>◇27日=東京◇国際G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走18頭  天才ランフランコ・デットーリ騎手(34)が操るイギリスのアルカセット(牡5)が、3センチの激闘を制した。後方待機策から直線で抜け出すと、激しい激しい追い比べを制した。勝ちタイムは世界レコードの2分22秒1。遠い昔に始まった騎手と調教師の因縁が、日本で大きな花を咲かせた。2着は追い込んだハーツクライ(牡4、栗東・橋口)、1番人気ゼンノロブロイ(牡5、藤沢和)は3着に敗れた。

デットーリの「内」へのこだわりが、アルカセットに勝利をもたらした。スタートをゆっくり出すと、ラチ沿い目がけて斜めに切れ込んだ。7枠14番から発走して1コーナーでは早くも最内へ。「今日の馬場はインが伸びる」。6Rのプリンシペデルソル(最内を突いて2着)で、馬場コンディションをしっかり把握していたあたりはさすがだ。

昨年の凱旋門賞馬、BCターフ馬、カルティエ賞欧州年度代表馬
史上最強ともいえる外国馬を迎えた国際招待レース・第25回ジャパンカップは、3番人気の仏サンクルー大賞典の勝ち馬・アルカセット(L.デットーリ騎乗)が2.22.1の日本レコードでハナ差V。日本馬ハーツクライ(C.ルメール騎乗)はギリギリ追込届かず2着。


16年前の1989年第9回ジャパンカップ
日本の夢と期待を背負ったオグリキャップを壮絶な叩き合いの末に制したニュージーランドの女傑・ホーリックスの叩きだした2.22.2は当時の芝2400m世界レコード。記録はいつかは破られるものだが、競走馬としては限界ともいえるタイムに、これから先も破られることは無いのでは?という話も競馬ファンの間ではよくささやかれたものだ。


1枠から好スタートを切った1昨年のジャパンカップ覇者・タップダンスシチーが積極的に引っ張り、前半1000m58秒3というスプリント並みのハイペース。通常なら1回息を入れて一旦ペースを落とすものだが、この日のタップダンスシチーは余程体調が良かったのか、これ以降もそのままのペースで突っ走ってしまう。道中全く息の入らないサブマリンレースに先行した馬は全て脱落。この厳しい流れを中段やや後方で追走していたのがアルカセットだった。


最後の直線、アルカセットは先に抜け出したタップダンスシチーを早めに捕らえると、そこから英国馬らしい実に渋とい末脚を発揮する。欧州年度代表馬ウィジャボードを内に従えて坂を駆け上がると、その外からゼンノロブロイが一旦は抜け出す。が、異次元のごとき激しい消耗戦はディフェンディングチャンピオンでさえ最後の余力まで搾り取ってしまった。
残り100m。力尽きた前王者を尻目に、遂に1頭だけ抜け出したその時、最後の刺客が待っていた。内からスルスルと伸びるピンクの帽子…ハーツクライだ!その伸び脚は完全に逆転する勢い!!!
最後の50m。アルカセットハーツクライは鼻面を合わせると、文字通り火の出るようなデッドヒートを繰り広げる!デットーリVSルメール。悲鳴のような大歓声の中、欧州一流騎手同士の息詰まる叩き合いはゴール板まで続いた。決着は首の上げ下げによる写真判定
どちらが勝ったのか…ざわめく観衆が一瞬でどよめきに変わった。
電光掲示板に表示されたレコードの赤文字。2.22.1−遂にその厚き扉が、開かれたのだ。


アルカセットの競走能力は驚異的と言っていい。欧州の一流馬が集結するクラシックディスタンスにおいて、9戦して連対を外したことが無いという実績は、やはり伊達ではなかった。
が、これだけの馬でさえ欧州のチャンピオンではないのだから、日本競馬が着実に世界に近付きつつあるとはいえ、まだまだ世界は広いと痛感せざるをえない。


今回、この歴史的瞬間を同じ現場で体感できたことはこの上ない幸せである。