バックダンサーズ!

長老からのお誘いで『バックダンサーズ!』の試写会@九段会館に参加。
作りの綺麗なフライヤーからキャスティングとストーリーが気になり、観に行きたいと思っていたので渡りに船でした。
物語の縦軸は一口で言ってしまえば、よくある青春サクセスストーリー。
何よりもヒップポップダンスが好きだが、それが原因で高校を中退させられた親友同士「よしか」と「ミウ」(as hiroさん&平山あやさん)に、子持ちの元キャバ嬢「ともえ」(as ソニンさん)とアイドル歌手志望の女の子「愛子」(as サエコさん)が加わったダンスユニットバックダンサーズ(このベタがネーミングがしっくりくるところがいいね♪)」が、よしか&ミウのダンス仲間でメインボーカル「樹里」(長谷部優さん)の電撃引退を発端に、様々な危機・苦難を乗り越え周囲の協力を経て、自らのダンスパフォーマンスオンリーのライブステージを開催するまでが描かれている。
公式サイト【DOMAIN ERROR
見所はなんといっても随所に挿入される「バックダンサーズ」によるダンスパフォーマンスシーン。
音楽が本職のhiroさんやソニンさん、クラシック・バレエ経験者のサエコさんはともかく、ダンス未経験の平山あやさんが入って果たしてどのぐらいのできているのかが注目された。
「ひょっとしたらカット割りで誤魔化してくるのかな〜」なんて思っていたが、結構長廻しで撮ってたので、なかなかやるなと。エキストラで出演しているプロダンサーたちと比べたらスピード感で劣るのは致し方ないものの、それほど違和感は感じなかったし、素人がココまでできれば合格点でしょう。もっともライバルユニットとソロのダンスで対決するシーンではhiroさんとソニンさんが担当。さすがにそこまではムリだったようだ(笑)
あえてストーリー上の難点をあげるならば、ダンスムービーを謳い文句にするならば、特に前半をもっとテンポに乗っかって進めることに主眼を置いてもよかったような気がする。物語の殆どが素直な時系列で進んでいくので、観ていて多少タル〜く感じる部分があった。また、
  • よしかとミウは如何にして出合い親友になったのか?
  • ともえは何故母子家庭になったのか? また、一人息子を親元に残してまで東京で稼ぐことになったのはなぜか?
  • 愛子がアイドルを目指すに至った理由は何か?
尺の関係もあるのだろうが、そういったバックボーンが全く語られないままにストーリーが終わってしまうので、一人一人のキャラクターの厚みに欠ける。ならば(素人考えを承知で言えば)思い切って導入部分を省いて樹里引退のハプニングから始めてみても良かったんじゃないか。その後にモブシーンでそれぞれの過去を挿入していけば一人一人が心に抱えている苦悩や葛藤がより際立ったかな、なんて。
それと、ミウと「バックダンサーズ」のお守りを押し付けられた下っ端マネージャー(田中圭さん)との男女関係も腑に落ちない。お互いの揺れる心情などが殆ど描かれてないので、ある日突然恋人同士になってしまっている感が否めない。何かしらハプニングがあってお互いを意識しあうとか、そういったシーンがあってしかるべきだと思うが…。ミウが一旦ダンスを諦めかける時もこのマネージャーがもう一度立ち上がるきっかけを与えるのかと思ったらそうでもないし(単に「それでいいのか?!」とベタな疑問を投げかけるだけ)。これならば、メンバーを見守る役に徹してくれてたほうがストーリーの軸がぶれない。安っぽいベタな恋愛なんて、お金払った映画の中でわざわざ見たくないよねーw
あと最後のダンスライブの場面が少し短く感じた。おそらくLIVE感を伝えるための1発撮りだったと思うんだけどね。もっと圧倒する程の長さで見せた方がダンスの持つ迫力を伝えられたんじゃないかと。最大の見せ場なのに、どこかセカセカしてしまった印象を受けたのがチト残念なところ。
逆に全体を通して印象に残ったのが、よしかとオヤジロックバンドのボーカル「ジョージ」(陣内孝則さんの演技が秀逸!)のシーン。どさ周りのツアーで意気投合した2人が、ジョージが普段住処にしているポーターにおいて2人きりになってセッションをするのだが、hiroさんが演技ではなく素で楽しんでいるナァ♪って雰囲気が画面によく出ていた。陣内孝則さんとhiroさんという、一見ミスマッチな関係がこれほどしっくりくるとは。「タイヨウのうた」でYUIさんが演じた「雨音薫」の時と同様、音楽に造詣が深い者同士が絡むことで思わぬリアルさを生み出した名場面である。
この後、実はよしかとジョージの思わぬ関係が明らかになるのだが、思わず笑ってしまうこのシーンは見てのお楽しみ。
この映画の監督は長くCXの「月9」ドラマなど担当していた名演出家・永山耕三氏。今回が映画初監督作品である。
なるほど。解かりやすいストーリーだけど、作品として完成させるために、キャラクターごとのエピソードを殺ぎ落として作っちゃったという感じを受けたのは、氏がTV畑で長く過ごしてきたことを考えれば、いろんな意味で当然のことなのかも。
言いたいことを残らず表わすには尺が足りないし、だからといって1つの作品として見せなきゃいけないということを考えればどこかを削っていかなきゃならないし…という部分で、映画的手法に長けていない永山氏はかなり苦心したのだと思う。
良い悪いは別にして、映画の売れ行きによっては、これもまた最近流行りの映画⇒ドラマ化という流れもあるかもしれないですね。
まぁ当初期待していた分のモノは見れたので、点数としては60〜70点ぐらいか。ストーリーが単純なので、フラッと入って観る分にはGood!な映画でした。