忘れえぬ主人公たち

若槻さんがマンガ好きなのはデビューの頃から色々なところで公言しているし、それが昂じて雑誌での連載も持っていたのですが*1、その熱は今だに冷めていないようですね。
自分もマンガ好きでいい大人になった今でも欠かさずに読んでいる作品もあります。中にはそれを暗に卑下するような人もいますが、人間誰しも物心つく頃から人生のどこかでマンガに触れて成長してきたってところがあると思うのですよ。世の中のしくみや考え方、いろいろな知識をマンガを通して知ったり。教科書で習ってきた事は忘れても、なぜかよく読んでいたマンガだけはとても印象強かったり…って、ありませんか?

自分のマンガとの出逢いは、まだ小学校に上がる前に親に連れられていった近所の散髪屋に置いてあった少年ジャンプを手にとったのが始まりと記憶している。当時は中本繁さんが書いていた『ドリーム仮面』とか故ちばあきおさんの『キャプテン』なんかを読んでいたかなぁ。定期的にマンガを買ってもらえるような環境ではなかったから、月に1度散髪屋に行くのがとても楽しみだったのを覚えています。他のマガジンやらサンデーやらもあったような気がしたが、その散髪屋のご主人がジャンプを好きだったようで、自分もその頃はジャンプしか読んだ記憶がない。ともかく、世の中に漫画という面白くて魅力的な世界が此の世にあることを知った自分は、それ以降どっぷりと漫画に漬かっていくことになる。
小学生当時は他に週刊少年チャンピオン水島新司氏の『ドカベン』と故手塚治虫氏の『ブラックジャック』の2枚看板と藤子不二雄氏(当時)の『魔太郎がくる!』に代表される怪奇漫画や、その描写の卑猥さにPTAから苦情が殺到した山上たつひこ氏の『がきデカ』、ナンセンスギャグ鴨川ツバメ氏の『マカロニほうれん荘』、クールな主人公が作品の途中からさわやかな系に華麗なる転換を見せた石井いさみ氏の『750ライダー』などなど、バラエティーの富んだ作品を集めていたのでよく読んでいた。

その後小学校高学年の時に少年ジャンプ連載の『サーキットの狼』を読み、にわかに起こったスーパーカーブームを体験。プラモを買って、駄菓子屋でカードを集めて、ガチャガチャでスーパーカー消しゴムを集めて…自分のコレクター癖はこの頃から始まったんだな、きっと(笑)それでもあまり親にモノをせがんだことのない自分が、晴海で行なわれたスーパーカーショーにはどうしても行きたくて、都合のつかない親に代わって近所に住んでいた当時大学生のお兄さんに連れて行ってもらったことがある。それぐらい熱狂してたんだよね…懐かしいなぁ☆

自分で漫画を買うようになったのは小遣いがある程度自由になった中学のときからかな。車田正美氏の『リングにかけろ』が流行っていて、みんなで毎週ジャンプを廻し読み。何かというとその週に出てきた新しい&突飛な必殺パンチの名を叫んで友達とじゃれてた。『ギャラクティカ・マグナム!!』『ブーメラン・スクエア!!』は当時の男の子であれば、体育会系であれ文科系であれ、知らなきゃ馬鹿にされてハジキにされたほど。ちなみにアニメの影響で『ガンプラ』が流行りだしたのもちょうど同じ頃。『リンかけ』と『ガンプラ』は当時の自分にとって2大必須アイテムでした(笑)

この1980年の前後3年における週刊少年ジャンプは、『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』の鳥山明氏、『CATS☆EYE』『CITYHUNTER』の北条司氏、『北斗の拳』の原哲夫氏、『ウイングマン』『電影少女』の桂正和氏、『キン肉マン』のゆでたまご氏、そして現在の日本サッカーを支える選手たちに多大な影響を与えた『キャプテン翼』の高橋陽一氏、後に『ジョジョの奇妙な冒険』という空前の大作を発表する荒木飛呂彦氏などなど…今現在大御所と言われる才能豊かな作家さんが続々デビューして、その脇を『COBRA』で当時の最先端だったCGをいち早く漫画の世界に導入した先駆者・寺沢武一氏、『硬派銀次郎』『さわやか万太郎』など男のなかの男を書かせたら右に出るものがいない本宮ひろ志氏、連載漫画における同一作品として最長連載記録を更新しつづける『こち亀』の秋元治氏、後にビッグEと呼ばれ、絵は上手いが締め切りを守らない作家の代名詞となる江口寿史氏などの中堅ベテラン勢が固めて、『10週で人気が出なければ、例えベテランでも容赦なく連載打ち切り』という厳しい制約の中で選抜された多種多様な作品群は、空前のジャンプ黄金期を築き上げたのです。

一方同じ頃他誌では小学館系に秀逸な作品が多かった。あだち充氏が週刊ビッグコミックで『みゆき』週刊少年サンデーで『タッチ』を連載、高橋留美子さんの『うる星やつら』が健在でビッグコミックスピリッツでは『めぞん一刻』が始まってた。たがみよしひさ氏が『軽井沢シンドローム』を引っさげて連載を始めたのが同じ頃。今では青年誌で多彩な才能を見せる細野不二彦氏も当時は『どっきりドクター』『さすがの猿飛』を経て、モノマネでよく登場する『GU-GUガンモ』まで少年誌でがんばっていた。マガジンでは、しげの秀一氏が全国のライダーたちを熱くさせた青春群像劇『バリバリ伝説』、小林まこと氏の『1・2の三四郎』、今だにゴルフではショットを打つときの掛け声になっている『チャーシューメーン!』で有名なちばてつや氏のゴルフ漫画あした天気になあれ』、その写真のごとき細部に渡った背景描写が後に現代に活躍する世界中の映画作家に衝撃とインスピレーションを与え、ジャパニメーションと呼ばれる1つの潮流を築き上げたとされる大友克洋氏の大作『AKIRA』、不良ヤンキー漫画の代名詞であり今も長期連載が続く、きうちかずひろ氏『BE-BOP HIGHSCHOOL』。チャンピオンでは水島新司氏が『ドカベン』を経て他誌で主役を張っていた自作のキャラクターを総登場させて甲子園で戦わせるという水島版オールスター戦『大甲子園』を連載、今はなき少年キングには、不老不死の超絶エスパーが宇宙年表を股にかけて活躍する聖悠紀氏のライフワーク『超人ロック』と永遠不朽の名作・松本零士氏の『銀河鉄道999』の2大SFが鎮座していた。

この他にも少女漫画なんかも並行して数え切れないぐらい読んでいたのだが、正直語りだしたらキリがないのが漫画の世界。
あー、またいろいろ読みたくなった!

若槻千夏のすぺしゃるちぃぶろぐ】 http://blog.goo.ne.jp/vmail_wakatsuki/

*1:なぜか音楽系雑誌のザッピィでしたが…残念ながら雑誌のリニューアルで連載終了